盗作
俺は泥棒である。
往古来今、多様な泥棒が居るが、俺は奴等とは少し違う。
金を盗む訳では無い。骨董品宝石その他価値ある芸術の類にも、とんと興味が無い。
俺は、音を盗む泥棒である。
それはメロディかもしれない。装飾音かもしれない。
詩かもしれない。コード、リズムトラック、楽器の編成や音の嗜好なのかもしれない。また、何も盗んでいないのかもしれない。この音楽達からそれを見つけるのもいい。
糾弾することも許される。
客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か、非意図的かなど心持ちでしかない。
メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。
それでも、作品の価値は他者からの評価に依存しない。
盗んだ、盗んでないなどはただの情報でしかない。
本当の価値はそこにない。
ただ一聴して、一見して美しいと思った感覚だけが、
君の人生にとっての、その作品の価値を決める。
「盗作品」が作品足り得ないなど、誰が決めたのだろう。
俺は泥棒である。
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