貴方の故郷を教えてください【理事会営業クエ】
嵐
貴方の故郷を教えてください【理事会営業クエ】
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青の海はこの時間になると顔を変える。
「…んっ!!あーー!…疲れたぁ」
隣で恋愛相談仲間の同僚が伸びをしながらゲンナリと呟く。長い長いミーティングだった。帰り道、彼女の横顔には綺麗な夕日と橙の海が美しい。…キリエはまだ春の寒さを残すが、海のエリアは少し汗ばむ日が増えてきた。今日も夏のような良い天気の日だった。
「んー。結局結論、出なかったよね…はぁ」
微笑みながら返すシノの顔も疲れが浮かぶ。
「海のエリアの広報部に良い案を提出しろ!出来るだけ面白い案を沢山求む!…なんて急に言われてもなぁ…」
初夏から真夏にかけて、海のエリアは貿易と漁業の他に観光で収益を上げている。つまり、夏は広報部の書き入れ時なのだ。特に首都であるこの街の力の入れようは並のものではない。
「ってもなー…これだけハッキリした街じゃん?だから案なんて出尽くしてるよねぇ…」
彼女の言う通り、海、美味しい海鮮、楽しい海水浴…海の街ならではの強みなどとうの昔に使い尽くしており、これと言って目新しいキャッチフレーズや魅力が見当たらない。
二人は最後までウーンと唸りながら歩いていたが、帰り道の方が答えが出るより先に終わってしまった。
「あ、私ここ曲がるの。…来週からまた世界樹の方だっけ?…なーんか忙しいよねぇ…大丈夫!先輩の事は私が監視しとくから!」
最後に意地悪く笑うと元気よく手を振って走り出した。何だかんだ元気な子だなぁ…と苦笑いしつつ、シノも歩き出す。
家に着いたシノはいつものように荷物を片付け、着替えをして夕飯の準備。…そうだ、前に帰った時に野菜貰ったんだっけ…シノは小箱からプル豆を取り出した。春にかけて旬を迎える甘くて美味しい豆だ。
「魚介って強みも在り来りって却下されたけど…その季節にしか食べれない旬ってあるよね…」
シノの故郷は野菜が名物だが、あまりに有名で在り来り。…でも、その土地ならではの知識や見方って意外と奥深いものだ。例えば、春の豆…のような。
「もしかして、海の街にいて海の街の事ばっかり考えてるから煮詰まるのかも…」
そう言えば…シノは天井を見上げる。ニフ先輩はブレイザブリクの出身だっけ…。他の人ってどこから来たのだろう?ずっとキリエ?それとも…
シノはハッと息を飲んだ。皆の故郷について聞いてみたら、もしかしたら広報部にとって何か有益なヒントが得られるかも!…そして何より興味深い。皆、どこで暮らしていて、どんな物を見て、食べていたのか。
シノはお湯に豆を投げ入れつつ、来週からのミッションに胸高鳴らせていた。
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貴方の故郷について、インタビューさせて下さい。
お礼にシノより海の街のお土産を差し上げます(アイテムとしての換算はされない)
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