レファヌキ共和国の物語【第27章】
音楽:aya.c 文:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ)
レファヌキ共和国の物語【第27章】
- 78
- 13
- 5
第27章、さあ、満月に虹をかけて。
このリレー小説は、架空の国のカフェと、月を巡る物語です。
まずはこちらを⬇️
★まとめ読み用プレイリスト
(第1章〜第15章)
https://nana-music.com/playlists/3686144
(第16章〜 )
https://nana-music.com/playlists/3708915
★第1章に、この物語が生まれるまでのエピソードも書かれています。ご一読頂けると嬉しいです。
https://nana-music.com/sounds/061f6d77
【登場人物の紹介】(第26章時点)
https://nana-music.com/sounds/06442e37
✴︎26章までのネタバレを含みます。
【地名・用語等の紹介】(第26章時点)
https://nana-music.com/sounds/06442e43
✴︎26章までのネタバレを含みます。
★登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。
★文章の無断転載は、ご遠慮くださいね。
★朗読等のコラボの際は、下記のサウンドをご参考の上、キャプションの記載をお願いします(小説本文の転載はNGです)
↓
https://nana-music.com/sounds/065b1067
🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙
【第27章】満月の虹
「レファヌキは、やはり素敵な所ですね。こんな大物を釣るなんて、他では出来ませんからね」
カークユウは、コー・ギア・ユーを抱きしめていた。
ロッドハープのボディは、カークユウの背中と一体化し、弦は、カークユウ自身とコー・ギア・ユーに、複雑に絡み付いている。
「……カークユウ、これは一体どういう事だ?」
コー・ギア・ユーは、カークユウの腕の中で、身じろぎをした。絡み付いた弦のせいで、体の自由が効かない。カークユウは、くすくす笑った。
「釣りを楽しませて頂いているだけです。陛下を釣るなとは、命じられてませんから」
「お前、何を……」
「命じられた事以外は、好きにします。僕は、陛下の大義には興味が無いですから。むしろ、大義なんて大嫌いだ。だって」
言葉を切ると、カークユウは真顔になった。
「陛下が、大義にずっと苦しめられてきたのを、側で見てきましたから」
✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎
「……馬鹿な事を。祖先が味わった苦しみと比べたら、些細なものだ」
「その、些細な苦しみを、僕に受け継がなかったのは、何故?」
コー・ギア・ユーは黙った。
「僕には祖先の記憶が無い。ギア、君は自分と同じ苦しみを、僕に味わわせたくなかったんでしょ? それでも、僕は、充分、君の大義に苦しめられたけどね」
「黙れ! カークユウ、言葉遣いを改めよ。《ラ塔》を壊すのだ」
カークユウは微笑んだ。
「ギア、君はずっと、ラヌキで一番の魔法使いだったね。でも、今は違う。今、ラヌキで一番の魔法使いは、この僕だよ」
「何だって」
コー・ギア・ユーは目を見開いた。
「レファヌキの大気に含まれた沢山の祈りが、僕の祈りに呼応した。だから僕は、僕を作り替える事が出来た。もう、君の命には応じないよ」
「馬鹿な。お前は私が作ったのだ。お前が私に勝てる訳が無い」
コー・ギア・ユーは、カークユウの腕の中で、激しく身じろぎをしながら叫んだ。悲鳴のようなその声に、カークユウの穏やかな声が重なった。
「コー・ギア・ユー、言葉遣いを改めよ。僕の問いに答えて」
その途端、コー・ギア・ユーは動きを止めた。
✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎
しばらくの沈黙の後、コー・ギア・ユーはゆっくりと口を開いた。
「そうよ、カークユウ。毎日毎日、あんな夢を見るのは、私が最後でいいの。だから掟を破って、君に記憶を受け継がなかったの」
「知ってたよ」
「だからこそ、私には大義を守る責任がある。悲劇を繰り返す訳にはいかない。《ラ塔》を壊さなくちゃ」
「ギア、僕は、君に世界を作り替えさせたりしない。だって、君は、本当は、そんな事したくないんだから」
「でも、私には大義を守る責任があるのよ」
「君の大義なんか、大嫌いだ。君だって、君の大義が大嫌いなくせに」
「……ええ、そうよ。大義なんて大嫌い! でも」
言い募るコー・ギア・ユーに、カークユウは静かに告げた。
「コー・ギア・ユー、大義を捨てよ」
コー・ギア・ユーは沈黙した。その瞳からは涙が溢れた。
✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎
涙を流す少女を抱きしめたまま、少年は優しく語りかけた。
「ねえ、ギア、悲劇は、終わった事だよ。遠い遠い昔にね。それよりも、ほら、月を見て」
カークユウは、上空に顔を向けた。コー・ギア・ユーも、上を向いた。
「レファヌキの月は、本当に綺麗だね」
「ラヌキの月は、昔はもっと美しかった」
「だけど、ラヌキの月には、人が住めない。レファヌキの月はどうかな?」
「……カークユウ、まさか」
「行こうよ、ギア。君は、僕が居れば、他の民はいらないんでしょ?」
ロッドハープの弦が、更に幾重にも、ふたりに絡みついた。
「……カークユウ、今日も私が嫌い?」
「嫌いだよ。でも、厄介な事に、嫌いなのと同じくらい、君が好きだから、困るんだよね」
幾重にも重なった弦に包まれて、ふたりの姿は見えなくなった。弦で作られた巨大な繭は虹色に光り、やがて、満月へ吸い込まれるように、姿を消した。
︎ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎
カフェ・エイブでは、大合唱が続いていた。
だが、突然、観客が合唱をやめ、静まり返った。次の瞬間、観客全員が拍手をした。
アルバーラは、ひとり歌い続けている。その歌声に、ハーモニーが重なり、アルバーラは振り向いた。
フェアヤムが、アルバーラを見つめながら歌っていた。
歌声が、初めて途切れ、アルバーラは、泣き崩れた。フェアヤムは、アルバーラを抱きしめた。客席は拍手と歓声に包まれた。
✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎
「こちらにお座り下さい」
シーラがひとりの老人を、ウェイの隣の空席に案内した。腰が曲がり、シーラに支えられて歩くのが、やっとの様子だ。
「ありがとう。どうやらラヌキの時間の流れは、正常に戻ったようだが、こう急に歳を取ると、立っているのがきつくてね」
ラ・ニクラブカは、皺だらけの顔を綻ばせると、人差し指を立てて、片目を瞑った。
シーラ自身の顔にも、年齢相応の皺が刻まれているが、身のこなしは颯爽としている。
「あの、シーラさん、詰めればもうひとり座れます」
ゲンチアナはウェイに身を寄せ、直後に我に返って赤面した。
ウェイはゲンチアナの肩に手を置き、自分へ引き寄せた。ゲンチアナはますます赤くなった。
シーラは微笑んで、ゲンチアナの隣に座った。
✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎
ステージから、ピアノの音色が響いた。
エイブが19年振りに、店のピアノを弾いている。国一番と言われたピアニストの登場に、客席は沸きたった。
エイブのピアノに合わせて、アルバーラとフェアヤムが歌い出し、この日のカフェ・エイブのライブは、伝説となった。
(最終章・第28章へ続く)
第28章 エピローグ(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06492327
🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙
【 お 知 ら せ 】
★このリレー小説を同人誌化します!
数名の方から「紙の本で読みたい」というリクエストがありましたので、他の書き手の皆さんに、転載のご了解を頂きました。
リレー小説完結後、具体的に進める予定です。詳細が決まりましたら、何かの形でお知らせします!(但し、時間は相当かかると思います。気長にお待ち頂けるとありがたいです)
✴︎同人誌化するのは、16章以降を私が執筆したバージョンです。枝分かれのアナザーストーリーは含みません。ご了承下さい。
★リレー小説に参加したい方は、第16章以降、枝分かれでお願いします。私は私で、第16章以降、結末まで書かせて頂きます。
詳細は、第15章のキャプションをご覧下さい。
↓
https://nana-music.com/sounds/06276784
★コミュニティあります!
「レファヌキ共和国 国立よろず相談所」
https://nana-music.com/communities/1196360
リレー小説用につくりましたが、小説以外のレファヌキサウンドや、外部リンクも、確認できる限り、こちらに格納しています。雑談や感想も大歓迎! よろしければ覗いて下さると嬉しいです!
ーーーーーーー 🌖 ーーーーーーー
「レファヌキ共和国の物語」
企画:あーばー
https://nana-music.com/users/6071144
https://twitter.com/__a__ba__lalala/status/1443880160004952067?s=21
音楽:aya.c「レファヌキ共和国の曲」
DTM:c
https://nana-music.com/sounds/061ed505
フルート:aya(ふえふき)
https://nana-music.com/sounds/061f301a
リレー小説「レファヌキ共和国の物語」
書き手:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ)
https://nana-music.com/playlists/3686144
https://nana-music.com/playlists/3708915
リレー小説企画:清水はこべ(箱)
https://nana-music.com/sounds/061f6d77
https://twitter.com/shimizu_hakobe/status/1444445773312057347?s=21
第1章 プロローグ(書き手:清水はこべ・岬)
https://nana-music.com/sounds/061f6d77
第2章 狩猟月(書き手:ゑ。)
https://nana-music.com/sounds/061f769a
第3章 祭り日(書き手:jU''')
https://nana-music.com/sounds/061f7f32
第4章 新月前日のカフェ(書き手:香魚)
https://nana-music.com/sounds/06495f44
https://nana-music.com/users/10478635
第5章 二日月の宵(書き手:清水はこべ・岬)
https://nana-music.com/sounds/062051a0
第6章 静寂(書き手:(ゆぅ))
https://nana-music.com/sounds/0620ee31
第7章 隠された歴史(書き手:香魚)
https://nana-music.com/sounds/06495f73
https://nana-music.com/users/10478635
第8章 三日月の夜(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/0621807c
第9章 半月の図書館(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/0621f763
第10章 半月の病院(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06227be6
第11章 半月の劇場・前編(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06251e3b
第12章 半月の劇場・後編(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06255a5a
第13章 十日夜の王宮(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06259ae8
第14章 十日夜の監獄(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/0625e153
第15章 十日夜の夢(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06276784
第16章 十三夜のテラス席(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06292959
第17章 十三夜の店内(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/062b0a2b
第18章 十三夜の親子(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/062c15dc
第19章 十三夜の昔話(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/062de89b
第20章 十三夜の歌い手(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/062fd07f
第21章 十三夜の雷(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06316bdd
第22章 満月前の監獄(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/0635136c
第23章 満月前の海岸(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06378303
第24章 満月のライブ(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/063acfed
第25章 満月の図書館(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/063e3f4f
第26章 満月の広場(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06419ade
第27章 満月の虹(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06445583
第28章 エピローグ(書き手:清水はこべ)
https://nana-music.com/sounds/06492327
Special thanks
プロローグ設定協力:岬
https://twitter.com/misaki_u_e?s=21
イラスト:たけねこ(第7章設定協力)
(朝)https://nana-music.com/sounds/061fd48d
(夜)https://nana-music.com/sounds/0620aecf
ガイドブック(地理・歴史):蟹蟹クラブ(第8章設定協力)
https://nana-music.com/sounds/0620ce61
「月の子守唄」:(ゆぅ)(第15章設定協力)
https://nana-music.com/sounds/0624ae40
「永遠の月」:(ゆぅ)(第23章設定協力)
https://nana-music.com/sounds/061fc725
「失われた響き」:なかゆき(第26章設定協力)
https://nana-music.com/sounds/0622f7c1
参考サイト
アクラネカレンダー「満月カレンダー 2021年10月」
https://www.arachne.jp/onlinecalendar/mangetsu/
暦生活「月の呼び名」
https://www.543life.com/moonname/
ーーーーーーー 🌘 ーーーーーーー
十月に始まったリレー小説、こんなに長丁場になるとは思ってもみませんでした。お付き合いくださる皆さんには、感謝しかありません。
初稿が上がったのは11月でしたが、校正等に時間が掛かり、また、リアルでも色々あり、投稿の間隔はかなり空いてしまいました。でも、ようやくここまで辿り着きました。
次回、いよいよ、最終章です。最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
完結したら、記念にnanaライブ開きたいな、と、ぼんやり考えています。最終章のキャプションと、コミュニティで告知したいと思いますので、よろしかったら、いらしてくださいね。
レファヌキ共和国、この物語以外にも、色んなコラボがあります! オリジナル曲や、絵や、ナレーション、ガイドブックに、国旗のコラボもあるんですよ!
是非、皆さんも、この素晴らしい国を探索して、楽しんでくださいね!
★プレイリスト「レファヌキ共和国の音楽と絵画」
https://nana-music.com/playlists/3684932
https://nana-music.com/playlists/3689849
https://nana-music.com/playlists/3744935
ーーー★ーーー
ちなみに、私は、この物語以外にも、リレー小説をやっています。ご興味ある方は、のぞいて頂けると嬉しいです。
★「旅芸人一座の物語」
https://nana-music.com/playlists/3601402
https://nana-music.com/sounds/061cd18e
★「影のないボクと灰色の猫」
https://note.com/smzhkb/n/n55d4322010ac
https://nana-music.com/sounds/05d87982
#cオリジナル #謎設定 #あーばーさんに感謝の箱 #cさんに感謝の箱 #あやさんに感謝の箱 #岬さんに感謝の箱 #ゑさんに感謝の箱 #じゅーさんに感謝の箱 #あゆちゃんに感謝の箱 #かっこゆさんに感謝の箱 #箱のよみもの #レファヌキ共和国 #レファヌキ共和国の物語
Comment
5commnets
- 清水はこべ(箱) ★コメント・返信休みますあゆちゃん、お返事抜けていてごめんなさい! 逆に、合衆国に国王、という設定がなかったら、ギアさんは生まれていないので。ただ、ご推察通り、軍隊の出し方は悩みましたし、悩んだ末、私の解釈で回収してしまいました……。でも、本格的戦闘シーンは無くても、嬉しいと言ってもらえるなら、こちらこそ嬉しいです。 やっきーさんのサウンド、だいぶ遅くなったけれど、聴かせて頂きました!余裕がなくて、拍手しかできてないけど、素晴らしかったです。
- 清水はこべ(箱) ★コメント・返信休みますあゆちゃん、お返事めちゃくちゃ遅くて申し訳ない……! 改めてありがとう!!! そうなの、私が脳内に密かに隠し持っていた物語は、これでした。多分、第7章であゆちゃんが想定していたラヌキの王の物語は、全然違うものだったかもしれない、とは思うけれど、私はここに辿り着く事しか出来なくて……。 でも、私なりに、すごくこの物語を愛して、大切に書かせていただいたので、「愛」を感じてもらえたなら、すごく嬉しいです!
- 清水はこべ(箱) ★コメント・返信休みます
- yacky人物紹介と用語集を書いてくれたおかげで 勉強してよりはっきりと 話を理解することができましたー(*´▽`*)👍🥃🎵♬ カークユウとギアは 親子だったんだ(///∇///)← はじめから通して読みまーす♪
- yackyおおおー!ー!!!(`ロ´;) 🎵♬🎶 2回読み返しましたが まだ味わいつくせていないみたいなので 明日また読ませていただきます(///∇///)❤️🎵