僕のこと 原曲＋2 【旅芸人一座の物語〜第17話】

Mrs. GREEN APPLE

リレー小説【旅芸人一座の物語】第17話です。 物語の時系列としては 第16話「はちあわせのメッカ｜Despacito」の続きになります。 第16話「はちあわせのメッカ｜Despacito」 https://nana-music.com/sounds/0631f1ed 以下、過去作品の紹介とあらすじ紹介、 その後、物語になりますのでお楽しみください♪ ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※作中の登場人物は全て架空の存在です。 nana上のフレンドさんからお名前はお借りしている部分もありますが、性格その他全くの創作です。 ご了承ください。 ★ｰｰｰ✴︎ｰｰｰ★ｰｰｰ✴︎ｰｰｰ★ 【旅芸人一座の物語】 企画：エリス羽衣 書き手：エリス羽衣・清水はこべ（箱） ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402 ② https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ｰｰｰ✴︎ｰｰｰ★ｰｰｰ✴︎ｰｰｰ★ 旅芸人一座の物語 第17話「僕のこと」 書き手：エリス羽衣 ボーカル：エリス羽衣 ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 何も知らない、貴族の少女アコベールは、一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、エリージャもまた、アコベールの無邪気さに癒される。 一座が王宮を去る日、馬車の荷台に隠れて、こっそりエリージャについて行こうとしたアコベールだったが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。 一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。 炎を逃れた二人は、老医師ミムルドの元を訪れる。 ミムルドは、アコベールの後ろ盾になる事を約束。 一座に戻ったエリージャは、ミムルドから託された伝言をジェイに告げた。それを聞いたジェイはさっそくミムルドを訪ねることにしたのだった。 ✴︎ｰｰｰ★ｰｰｰ✴︎ ジェイが慌ただしく出立してから数日。 興行も打てず移動もできない一座は、 森の外れの草地に野営していた。 気ままにのんびり過ごす者、 時間のあるうちに新しい曲に挑戦しようとする者、 座員たちの過ごし方はさまざまだった。 エリージャは毎日、夕刻になると 天幕から少し離れたところで一人で歌っていた。 修練というほどまじめに歌っているわけではないが、 歌うことで喉の調子と精神の安定を図ることができる。 その日は、まだ明るい空に 一番星がひときわ美しく大きく輝いていた。 ぼくときみとではなにが違う それぞれ見てきた景色がある・・・ あの娘は元気だろうか。 ミムルド師の元で身の安全は保障されているが、 別れの挨拶もせずに一人にしてしまった。 「今日の歌はなんだか感傷的に聞こえるわね」 振り向くと、ミカが立っていた。 「ミカ姐、座長代理お疲れ様」 「やめてよその言い方。 　代理とか補佐とか聴きたくないわー」 言いながらミカが草の上に座る。 「まあ、みんな大人だしね。 　食糧もまだまだ充分あるし。動けない状態じゃ 　仕切るったってなにもすることないわ」 エリージャもミカの隣に腰を下ろす。 話している間にも、空の色が地表に近いところから 朱、灰青、蒼に変化していく。 一番星の輝きがいっそう増したようだ。 「お城で火事があったんだってね。 　あのお嬢ちゃんのお屋敷なんでしょ？ 　こういっちゃなんだけど、 　あの子荷馬車に潜り込んでてよかったね。 　命拾いしたじゃない」 「…そうだけど、そういう言い方はちょっと」 なんでもずけずけ言うのがミカの良いところだが、 あんまりな言い方だ。 「何人か亡くなったり行方不明だってねー。 　あんたたち火事見たの？火事に気付いたの、 　お嬢ちゃんと別れる前？後？」 「ただじゃ何も言わない」 ミカが黙った。その目がくるんと興味深げに動く。 「ミカ姐、私を怒らせようとしてるでしょ。 　怒った勢いでつるっと情報もらさせようとしてる。 　その手には乗らない」 「えーなんのことおー？」 しれっとした調子で笑うミカの姿が ずいぶんと見えにくくなってきた。 いつの間にか、空は蒼から群青に、 地表の朱色はほんのり名残をとどめるだけだ。 「ミカ姐が教えてくれたんでしょ」 （自分の持ってる知識や技術をただで渡すなんて 　するんじゃない。堂々と対価を要求しな！） 座長に森で助けられ、 一座で暮らし始めてしばらく経った頃、 ミカに怒鳴られたことを思い出してエリージャは笑った。 周りに言われるがままに、 無償で様々なことを引き受けていた自分と、 その無知にたかっていた連中をミカは一喝したのだ。 （あんたは親切のつもりなのかもしれないけどねえ、 　こいつらはあんたを利用してるだけ！ 　いいように付けこんでるの！ 　あんたの育ちの良さにね！) 怒鳴られたときはただ怖いだけだったが、今なら解る。 自分を磨き、自分の価値を高めていかなければ 居場所はない。 自分の足で立ち、自分の身は自分で守る。 ここはそういう厳しい世界なのだ。 黄昏どきから夜へと表情を変えた空には、 様々な明るさの星々が瞬いている。 今夜は雲もなく、乾いた空気のおかげで 星々の煌めきが鮮明に見える。 天幕のほうから夕餉の良い匂いが漂ってきた。 「ああ～お腹すいちゃった。今日の夕餉は何かな～。 　仕切り役って、食事の準備を人任せにできるところが 　いいわ、うん」 うーんとひとつ伸びをしてミカが立ち上がる。 エリージャもそれに倣う。 天幕に向かって歩き出しながら、ミカが言った。 「あんた、明日の朝餉当番だからね」 「ええーっ。私が朝苦手なの知ってるくせに… 　誰かに替わってもらおうかな。 　いくら払えば替わってくれるかな」 「そんなところで金使うんかい！」 「今ちょっと懐あったかいから」 「え！なにそれどういうこと！ 　やっぱりあんたなんかいいネタ持ってんでしょ、 　吐きなさいよー」 「いくら出します？座長代理」 「だーかーらーその言い方やめろって」 辺りにはすっかり夜の帳が下りて、地上の明かりは 夕餉の煮炊きをする石積みかまどの炎だけだ。 ミカと並んで歩きながら エリージャはそっと夜空に目を向けた。 そして、「夜の散歩」に自分を誘ってくれた少女へ、 心の中でエールを送った。 （大丈夫。私が今、こうして笑っていられるように 　あなたもきっと笑える日が来る） ぼくはぼくとして　いまを生きてゆく とても愛しいことだ・・・ ★ｰｰｰ✴︎ｰｰｰ★ｰｰｰ✴︎ｰｰｰ★ お読みいただきありがとうございました！ 16話を読んだらミカとエリージャの話が書きたくなって 年末で仕事が休みに入ったのを良いことに 一気に書いて歌ってしまいました😊 ミカ姐さんは姐御肌なんですね。 この人好きだわ〜💕 もともとは「天体観測」をもう一度合わせるつもりだったんですが、先日からハマっている「僕のこと」も似合うかなと思って、yuaさんの＋2キーの演奏で歌わせていただきました。ありがとうございました✨✨ 見返すと、この20日間で3回「僕のこと」を歌っていました😅気に入りすぎやで👋 ミカ姐さんに怒鳴られる子どもエリージャの話は、どこかで改めて書けたらいいな💕 次ははこべさんのターンです。 はこべさん、いつも好き勝手させてくれてありがとう😊💕感謝してます！ ✴︎ｰｰｰ★ｰｰｰ✴︎ 「僕のこと」 【旅芸人一座の物語〜第17話】 ★音楽 Mrs.GREEN APPLE「僕のこと」 作詞：大森元貴 作曲：大森元貴 ピアノ：yua https://nana-music.com/users/4849892 歌唱：エリス羽衣 
 ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画：エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手：エリス羽衣・清水はこべ（箱） （第17話書き手：エリス羽衣) #僕のこと #MrsGREENAPPLE #yua #旅芸人一座の物語 #yuaさんとエリス #エリス2021の12 #エリス平原綾香 #エリスミセス