シネマ
Vivid BAD SQUAD/Ayase
シネマ
- 121
- 12
- 0
鳳梨瑞希 ソロサウンド(みのりプロ非公式サウンド)
【歌詞】
誰もが突然に始まった
デタラメなシナリオの上で
それは映画のような
まるで映画のような
どこにでもあるストーリー
間違いだらけの道のりだ
丸付けられるのは幾つだ
何が良くないのか
何処が良くないのか
そこまで教えてくれよ
明け方の妄想
貴重な逃避行と
勘違いの英雄ごっこ
もう渋滞してんだ
どうしようもこうしようもないよな
こんなはずじゃなかったよなって
どんなはずだったんだよなって
思えば思うほど
まだここじゃ
ないない
終わりじゃないから
向いてないない
なら書き変えてしまえよ
ほら大体
いつもいつでもきっと
主役は僕だけだろ
いつの日かバイバイ
終わりはくるから
拍手喝采
笑顔でカーテンコール
変えたい未来はここにあった
思うままに好きなように
これはそうだ
最底辺から駆け上がった
映画のようなストーリー
#みのらい非公式 #シネマ #パイナポー兄さん
(Twitter感想は、「# パイナポー兄さんファンクラブ」で呟いてね。)
ここから、瑞希の過去のお話。
『驕る俺は過去話』
🍍-----------------------------🍍
俺は「優等生」だった。
勉強も運動も人並み以上、いや、かなりできた。
顔だってこの顔だ。容姿端麗と言って良いだろう。
物心ついた頃には周りからチヤホヤされていた。
小中高と何も問題無く楽しく過ごしていた。
話すことも得意だし、友達や恋人には困らなかった。
困らなかった。何も。
何をしても“上手く”いって、賞賛の声を浴びる。
“努力”や“嫉妬”が分からない。全て簡単に手に入るから。
ある時ふと思ってしまった。
「俺にとってこの世界は過ごしやすく、そして、
憂鬱だ。」と。
そう、どこかで気づいてしまった。
心の糸が切れるなんて表現した人は凄いと思う。
本当にその通り。何かがプツンと切れた気分だった。
その日から俺の世界は、まるでモノクロ映画のように映るようになった─────
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
大学の入学式が終わった後。
一緒に来ていた両親、妹と別れ、帰宅を装い逃避行。
高校生時代にモデルの仕事で稼いでいた、10代にしては莫大な額の貯金を、入学費として家に送った。
迷惑をかけたくなかった。
それからは色んな事をした。
居酒屋のホールスタッフ、レストランのキッチン、アミューズメント施設のスタッフ、テーマパークのスタッフ、商業施設の清掃員、ホテルのスタッフetc…………
業績と顔の良さで注目を集め、出世しそうになったりメディアへ露出しそうになったら辞めた。
どれをやっても、今までと変わらなかった。
「生きている心地がしない。」
それなのに息苦しさだけ感じていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
度々、深夜3:00くらいに実家へ帰っていた。
誰にもバレないよう、こっそりと。
寝ている両親と妹の顔を見ては、
自分の現状に嫌気がさした。
妹の机の上には、宛先が書かれていない封筒の中に
俺への手紙が入っていた。
大学での事や友人との事、愛猫の事、将来の夢の事。
俺を待っているという事。
始発電車を待つこと1時間半。改札前、駅の階段に座りながら、これからどうするかを考えては辞めを繰り返す。
そうして電車に乗る時刻になる。
後日、妹への手紙を出す。
ちゃんと届いたかは分からない。
差出人の住所を書いてないから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
23歳。
相変わらず生活は変わらない。
生活費を稼ぎながら何をするでもなく。
時々実家に帰っては手紙を返す。
もう、家族にはバレてるだろう。
そんな変わらない生活の中、1つ変わったことがあった。
妹がアイドルになった。
少し前の手紙で知った事だった。
俺とは違い、“努力”で掴んだその居場所。
文面から溢れる誇らしげな雰囲気に、俺も妹を誇らしく思った。
羨ましく思った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ある日のバイト帰り。
道端で通りかかったあるライブ会場が目に入ってきた。
『code. 1st LIVE』。
目頭が熱くなって、鼻先がじんわりと熱くなる。
気づけば中に入っていた。
ここに行けば、何か分かる気がした。
知り合いがいる可能性もあったが、マスクにメガネを掛け、髪の毛も染めた俺の事を、誰も気づかないだろう。
いつの間にか、こんなに。
見た目も変わってしまっていた。
いや、1番変わったのは中身だろうか。
今の俺に、かつての輝く面影は無くなっていた。
そんなことを考えていたのは最初だけ。
LIVEが始まってからは、息を呑むことも忘れ引き込まれていた。何か、エネルギーを感じた。
いつの間にか、アンコールらしい。
あぁ、LIVEが終わる。
キラキラと輝くその金髪も。
真剣なその眼差しも。
大人っぽくて支えるように綺麗な歌声も。
カッコつけてるのに
たまにふにゃっと笑うその顔も。
俺のよく知る妹で。
初めて見る妹だった。
よく似た容姿の妹は、
かつての俺を思い起こさせた。
俺は少し口角を上げながら、一足先に入口へと向かった。
やりたい事を決めた。初めての感覚だった。
俺のモノクロ映画のようだった景色に、少し色が戻っていく気がした。
ここがどん底の最底辺だとしたら。
もう沈むことは無いから。
ただ駆け上がっていく、這い上がっていく。それだけ。
大丈夫、俺は「優等生」だ。
どんなことがあろうと、欲しいものは手にしていく。
思うままに、好きなように。
会場を出るその足取りが軽かったことを、
今も身体が覚えている。
『驕る俺は過去話』fin.
🍍-----------------------------🍍
Comment
No Comments Yet.