我ながら何を馬鹿なことをしているのだろうと、敵陣で安堵の表情を浮かべる4人と戦神の様子を物陰から覗きながら、頭を掻きむしる。
稲妻雲の忍も、対戦相手である火護ノ国の民も、そのまま放っておけば混乱と焦りに包まれて、こちらに有利になるほかないというのに。
「……あーあ、いらんお節介焼いた。」
勝つために最善かつ全力を尽くす。
勝利のためなら黒(アウト)にならないところまでは、何でもできると思っていた。
だが、必死に彼女らを呼び戻そうとする仲間の姿に、申し訳程度に備えた情が動かされたのだろうか。分析し思考し、己を信頼して、自分に最も益のある行動を選ぶことこそが最善だと、頭ではわかっていたのに、気がつけばいつものように体が動いていた。
「主催業やってると、こういうのついつい情湧いちゃうのよね〜……嫌でも気持ちわかるからさ。」
限界企画民だなぁなんてぼやきながら、ひょいと囲いを乗り越え、愛しい戦神様と信頼できる仲間の待つ自陣へと足を進める。先の不安は増えたが、後悔はない。
“ だってこれで負かしたら、文句無いでしょう? ”
ふっと性の悪い笑みが溢れて、ああ自分はやはり善人ではないのだと再確認する。
自分は『基本的に自分勝手なヤツ』だ。
酷く不安定な己を型に嵌めて安心するには、これでいい。
───そんな要領の良く、自分勝手な忍の一幕
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