まほろば少年譚
ユリイ・カノン
まほろば少年譚
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まほろば少年譚
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🌿梁和 廿楽(CV日向ひなの)
https://nana-music.com/users/2284271/
🔍葉月 彼方(CV RAKKO)
https://nana-music.com/users/5226056
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🌿いついつ出やる 籠の外
抜き足差し足じゃ おいてけぼりだ
倦まず弛まず歩けども
おぼつかない足取り
🔍ないものばかりほしがって
探し疲れて続きはいつかとか
でも 手をこまね
つっ立っているよりはまだいいな
🌿あめ あめ 降れやもっと
🔍蛇の目の傘さしたいの
🔍絢爛な模様のぼんぼりたちも
ただそれだけじゃ物足りないな
🌿灯してよこころごと
🔍🌿まどかな月がのぼる今宵は
あまねく世に響くように謳え
巡るぐるり かりそめのいま
生き死になんて忘れちゃって
🔍夢の道すがら 覚めないままで
🌿その手を取って 闇夜だって駆ける
🔍🌿ちとせ流れても憶えていて少年の日の夢
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ひんやりとした空気が頬に触れ、彼方はゆっくりと目を覚ました。周囲は真っ暗で、モーターの音が軽く身体に振動している。目を凝らして見てみると、見慣れた三日月の髪飾りが暗闇の中で光っていた。彼方は安堵して、廿楽の方へ行こうと足を動かそうとした。しかし……
「あれ、オレ、縛られてる!?」
彼方の足は縄で縛り付けられており、そう簡単に解くことは出来なかった。同様に、壁にもたれかかっている廿楽の足も固く結ばれている。
「何があったんだ? オレたち……」
「そこでじっとしてくれていたら、何もしないわ」
冷ややかな女の声に、二人は揃って顔を上げる。僅かに光が差し込んでいる重たい扉の前には、長い黒髪のしとやかな娘の姿。
「あんたは、宝政家の娘……」
「ユキさん、どうして……! あなたが犯人だったんですか!?」
その娘──ユキは、彼方の声にゆるりと首を振ると、穏やかに微笑を浮かべ、自身の胸にそっと手を置いた。
「いいえ、私は誰も殺していない。ただ、そうね、あの人に加担した罪を問われるのならば、私は犯人の一人よ」
言葉を失った二人を交互に見つめ、ユキは「でも、心配しないで」と優しげな面差しで口を開いた。
「あなた達の事は見逃してあげる。ここで二時間ばかりじっとしていさえすれば、何もしないわ。……くれぐれも、あの人の邪魔はしないでね」
「待て! 僕たちをこんな所に閉じ込めて、ただで済むと思うなよ! 一体ここはどこなんだ!?」
廿楽の問いかけには答えず、踵を返した身体は、慣れた手つきで扉に手をかける。扉が閉まる直前、こちらを見たユキの顔は、ゾッとするほどに無表情だった。
「そんなに騒いでいると、力尽きてしまうわよ。……勝手に死んでしまったなら、私は責任を負わないわ」
不気味な音を立てて軋みながら、扉は完全に閉じられてしまった。外から、鍵をかける音が淡白に響く。廿楽は小さく舌打ちをすると、身体を這わせながら彼方の隣に座り込み、ぴったりと肩を合わせた。
「二時間程の辛抱だ。なるべくじっとしていよう」
「何でだよ! 今すぐにでも拘束を解いて、皆と合流しなきゃ!」
切羽詰まった声で説得しようとする彼方を、廿楽は身体を押すことで黙らせた。
「君は、ここがどこだか分かっていないようだね」
「倉庫かなにかじゃないのか? いや、そういえば……やけに寒い……」
「ここは恐らく、最新設備の冷暗室だよ。ほら、調理前の肉が置かれている」
廿楽が指さした先には、きっちりと積まれた食料の類が見える。そこから導き出される予測に、彼方はゾッとして身を縮こまらせた。
「てことはオレたち……」
「下手に動けば最悪凍死、かな」
廿楽の口からやるせない笑いが漏れる。身体の右側だけが、あたたかい。不本意だが、今はじっと身を寄せあっている他に生き残る術は無いようだった。
「二時間くらいなら、こうしていればもつはずだ。……いざとなれば、お前に僕の服をやるよ」
「何言って……」
「お前、先生と仲直りしなきゃいけないだろ」
泣きそうな彼方の頭に手を置いて、無理やり撫でる。何故自分がこんな事をしているのかは分からなかったが、もし自分がついて行く立場だったなら、自分の先を行くあの人間は、きっとこうするだろうと言う確信があった。
「……その時は廿楽くんも一緒だからな」
「は?」
「一緒に謝ってくれねえと、オレ謝れないもん」
ぎゅっと服の袖を掴む彼方。そこがまたじんわりとあたたかくなって、廿楽は彼に見えないようにそっと顔をほころばせる。
「分かったよ」
突き放すように答えたはずの言葉は、柔らかく包まれていて、冷えきった空気も遠のいていくようだった。
紅華探偵團物語
寝台特急連続殺人事件編
第一夜 終幕
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絵:ちゅん
伴奏:まッきー 様
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寝台特急連続殺人事件編・第一夜
https://nana-music.com/playlists/3713393
#紅華探偵團
#まほろば少年譚 #ユリイカノン #まッきー
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