ギルバート・雷庵 キャラクターストーリー
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ギルバート・雷庵 キャラクターストーリー
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町外れの教会。光が差し込むステンドグラスの下には1人の青年が立っている。
ギルバート「……あいつら何処行きやがったんだよ」
彼はギルバート・雷庵(ライアン)。日本とイギリスのハーフだが、生まれも育ちもイギリス。
ギルバート「俺はどうすればいいんだ……」
数年前、彼は腐れ縁とも呼べる友人3人を失ってしまった。ギルバートは1人うずくまり、伸びた前髪をくしゃりと握る。その時、教会の扉がゆっくりと開き、誰かが近づいてくる。
ギルバート「教えてくれよ……」
その人物は、ギルバートの言葉に応えるように声をかける。
?「教えてあげようか?」
ギルバート「…っ!」
ギルバートは勢いよく立ち上がる。そこに立っていたのは、緩やかに波打つ黒髪の女性だった。
?「あ、驚かせちゃったね。ごめんごめん。私はレベッカ。レベッカ・ライリー。君の名前は?」
ギルバート「……」
レベッカ「そんなに警戒しないでよ。君にとって悪い話じゃないからね。」
ギルバート「……俺はギルバート・雷庵。」
レベッカ「君、もしかしてハーフだったりするの?」
ギルバート「あぁ。」
レベッカ「へぇ。どこ?」
ギルバート「イギリスと日本だ。」
レベッカ「いいねぇ。母国はイギリス?それとも日本?」
ギルバート「イギリスだ。」
レベッカ「なるほど。」
ギルバート「……で、あんたは一体」
レベッカ「あぁ、私?ヤードの人間だよ。こう見えても結構それなりの地位には就いてるんだ〜」
ギルバート「ヤード?」
レベッカ「そうそう。聞いたことない?スコットランド・ヤード。」
ギルバート「それは知ってるが…」
レベッカ「何でヤードの人間が君に話しかけたのか想像つかないか」
ギルバート「……」
レベッカ「あ、図星だったみたいだねぇ。そりゃそうだ。」
ギルバート「で、あんたの目的は?」
レベッカ「目的っていうか、成り行きだね。強いて言うなら私の勘。」
ギルバート「は?」
レベッカ「君、結構いい線行くと思うんだよね。」
ギルバート「……」
レベッカ「どうすればいいのか、分からないんだろう?なら、君もヤードの人間になればいい。そうすれば、君には職ができて、人探しもできるし一石二鳥だ。」
ギルバート「っ!何で人探しだって…」
レベッカ「あれ、誰か探してるんじゃないの?さっき言ってたよね。黄昏ちゃってさ〜。確かこんな風に…"あいつら何処行きやがったんだ…"って!」
ギルバートの言葉を忠実に再現するレベッカ。
ギルバート「…それ俺の真似か?」
レベッカ「うん、我ながら上出来だ。君もしかしてナルシスト?」
ギルバート「は?」
ナルシストと呼ばれ青筋を軽く浮かべるギルバートに、レベッカは軽く謝る。
レベッカ「ごめんごめん、からかい過ぎたね。で、本題に入るけど、どう?ヤードに入らない?」
ギルバート「……何で俺なんだ。」
レベッカ「え?そんなの何となくに決まってるでしょ。私の勘が導き出したってのも多少はあるけどさ。……上が煩いんだよね。やれ人材発掘しろだの、やれ後輩指導しろだの。ネチネチネチネチと。だから、うちは万年人手不足なんだろうが…って感じでね?」
最後にはため息をつくレベッカにギルバートは軽く労る。
ギルバート「……苦労してんだな」
レベッカ「まぁね。…君が断るならそれはそれでいい。別に誰でもいいし。私1人で事足りる。私は有能だから。」
すぐに立ち直ったレベッカは、余裕のある笑みを浮かべる。そんな彼女の様子にギルバートは挑発するように言葉を発する。
ギルバート「あんたの勘が間違ったことは?」
レベッカ「ないね。絶対。」
ギルバート「俺がヤードになったとして、あんたにメリットがないだろう。」
レベッカ「メリット?うーん、強いて言うなら、私が楽できること、かな。」
ギルバート「……適当だな」
レベッカ「……別に私は好きでヤードになった訳じゃない。それこそ成り行きだし。面倒事なんて御免だけど、放っておけないんだよね。…まぁ、こればっかりは性分だからなぁ。もはやワーカーホリック…あー、恐ろしい!」
ギルバート「仮に俺が頷いたとして、どうやってヤードに入るんだ?」
レベッカ「あぁ、その辺は心配いらないよ。私が口利きしておくから!」
ギルバート「え…」
レベッカ「ほら、私って有能だから。上司への口利きなんて日常茶飯事だし。」
ギルバート「……(もしかしてヤバいやつ?)」
レベッカ「あ!今、私のことヤバいやつって思ったでしょ?」
ギルバート「えっ!?」
レベッカ「なんてね、カマ掛けただけ。そんなことで動揺してたらこの先やっていけないよー?」
ギルバート「俺はヤードになるなんてまだ、」
その言葉を聞くと、先程までの軽い雰囲気はなく、どこか凛とした雰囲気を纏うレベッカ。
レベッカ「じゃあ、私が言わせて見せよう。」
ギルバート「は?」
レベッカ「君には大切な人がいる。しかも3人。でも、その3人とは訳あって離れ離れになってる。ヤードになれば職務権限で堂々と調べられる。」
ギルバート「職務権限って」
レベッカ「私たちは、法を守ることに重きを置いている訳じゃない。必要であればどんな不正だってやる。」
ギルバート「……めちゃくちゃだ」
レベッカ「必要悪だよ。私たちの仕事は国を、この英国を守ること。法の遵守はその通り道に過ぎない。」
ギルバート「……」
レベッカ「君に守りたい人は居る?」
ギルバート「……あぁ。」
レベッカ「どうせなら、堂々と守りたくない?大層な理由なんてなくていい。君が思う正義を貫いて、君のやり方でこの国を守ればいいんだから。」
ギルバート「……」
レベッカ「まぁ、すぐに決める必要はない。もし興味があるならここに連絡を。それじゃあ、また会おう、青年!」
レベッカは名刺をギルバートに渡し、その場を去っていこうとする。
ギルバート「……待ってくれ!」
ギルバートは、咄嗟に呼び止める。
レベッカ「ん?」
考える間もなく、自然と言葉が出る。レベッカの価値観に惹かれたのだ。でも不思議と後悔はなかった。
ギルバート「なるよ。…ヤードになる。……口利きしてくれるんだろ?」
レベッカは不敵に微笑む。
レベッカ「ほらね。」
ギルバート「え?」
レベッカ「言ったでしょ?"言わせて見せよう"って。」
ギルバート「……参りました。」
レベッカは、雰囲気を和らげる。
レベッカ「そういえば、君の名前何だっけ?」
ギルバート「は!?言っただろ!」
レベッカ「あれー?そうだっけ…ごめんごめん、興味ない人の名前覚えるの苦手なんだよね」
ギルバート「それでよく務まるな…」
レベッカ「必要ないからねぇ」
ギルバート「え?」
レベッカ「私、潜入専門なの。情報集め中心にね。」
ギルバート「……へぇ」
レベッカ「まぁ、他にもいろいろやってるんだけどね。まぁ、いずれ君にもチャンスが来るだろうから。今のうちに人脈は作っておいた方がいいよ。」
ギルバート「人脈か」
レベッカ「情報屋とかどう?」
ギルバート「え?」
レベッカ「隠れ蓑。」
ギルバート「…なるほど?」
言葉とは裏腹に意味が分からない、とでも言いたげなギルバートにレベッカは微笑む。
レベッカ「これからどんどん教えこんでいくから覚悟してね。君には期待してるんだから。」
ギルバート「名前すら覚えてないのに?」
レベッカ「失敬だね!名前を覚えるくらい簡単にできる!本気を出せばね。」
ギルバート「忘れたんじゃないのか?」
レベッカ「……あれだろう?ジルバート!」
間
ギルバート「ジ?」
レベッカ「……」
ギルバート「…部下の名前くらい覚えろよ。」
レベッカ「努力しよう。」
ギルバート「……先が思いやられる。(ため息をついて)「ジ」じゃなく、「ギ」ルバートだ。」
レベッカ「全く、紛らわしい名前だねぇ!」
ギルバート「……」
無言の抗議にレベッカは軽く謝る。
レベッカ「ごめんごめん。ギルバートだね。…(反芻して)うん、覚えたよ」
ギルバート「ほんとかよ…」
レベッカ「女に二言はないよ。」
レベッカの言葉を信じることにしたのか、ギルバートは頷く。
ギルバート「……おう」
レベッカ「じゃあ、行こうか。」
ギルバート「何処に?」
レベッカ「本部!」
ギルバート「本部ってヤードの…え、今から?」
レベッカ「そうだね。」
ギルバート「え、今から?」
レベッカ「今から。」
ヤードになるとは言ったものの本当になれるかどうかは分からない。不安を表に出すギルバート。
ギルバート「……」
レベッカ「大丈夫。私に任せて。」
再び凛とした雰囲気を纏うレベッカに、ギルバートは自然と頷いた。
ギルバート「……あぁ。」
レベッカ「さぁ、早く行くよ!"ジ"、あ、ギルバート!」
レベッカは慌てて言い直すと、いそいそと教会を後にする。
ギルバート「早速間違えてんじゃねぇか…!」
呆れ半分、怒り半分で着いていくギルバートだった。
如何だったかな。これが彼がヤード、そして情報屋になったきっかけ。それでは、また次の話で会おう。
FIN
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