Lyrics 凛憧-りんどう- さだまさし
Written by
さだまさし
Composition
さだまさし
父と共に城跡から見おろす
夕焼けが好きだった
息を切らす 肩に置かれた
手の体温はもっと好きだった
ある日父がいつもの気まぐれに
僕を抱きしめたりしたが
そのままじっと声も立てず
静かに泣いたことがあった
その朧気な記憶がいつか
重さを増すと知るはずもなく
幼い僕は 何か恥ずかしく
崖の淵に咲いた
薄紫の花をじっとみつめていた
早咲きのりんどうと
それはあとで知った
僕が父の涙を見たのは
その一度きりだった
祖母を送り 友を送り
その時にも涙は見せなかった
あれ程に可愛がった妹が
嫁ぐと決めた日も
ただおだやかな父の姿に
僕はふと あの日を思い出した
父といえど 男といえど
時のはざまに落ちる刻がある
今となればわかることがあり
そっと胸がつまる
花嫁の父が今 少し照れた背中で
娘から花束を贈られているところ
薄紫の花がじっと見つめていた
遅咲きのりんどうと
それはすぐにわかった