Lyrics 水底の町 さだまさし
Written by
さだまさし
Composition
さだまさし
八幡様の境内の楠にはリスが住んでいた
石段下の泉には蛍が飛んでた夏の日
裏山へゆけばクワガタやカブトムシや
アゲハチョウがいて
夕立のあと夏草の匂いが死ぬ程好きだった
遠くでお寺の鐘が鳴って どこかの焚火の煙が
狭い谷間に重なるようにじっと蟠っていた
僕の育った小さな町は五年前の今日 湖の底に沈んだ
僕は都会のアパートで ささやかに独り棲んでいる
酒を借りては友達に
愚痴をいう日もあるけれど
何かこうして暮らすことが長い夢をみているような
どこか本気じゃないような思いになるのは何故だろう
本当の僕はどこかにいて 僕を捜しているようだ
ビルの谷間で夢たちがじっと蟠っている
僕を支える哀しい都会(まち)も とても大きな
湖に沈もうとしている
雨の少ない晴れた夏にダムに立てば 八幡様と
立ち枯れた楠が 少しだけ見える日がある
実はあそこの床下に 少年時代の
宝が一杯つまっている箱が埋めてあるんだ
今ふるさとが 僕にむかって大丈夫かと
尋ねてくれている
大丈夫 大丈夫 大丈夫・・・・・・